地元の木と職人でつくる世代を超えていく「器」

 家はひとのために在り、風土のなかで生きていく、一つの生命体でもあります。近年の建築過程における工業化・均一化は風土性の喪失だけではなく、住まうひとの個性まで奪ってはいないでしょうか。

 古来、私たちの祖先は、いまは伝統構法と総称される木組みで家を造ってきました。それは梁が荷重を支えることができる適切な距離で柱を立て、梁で繋ぐ、あるいは梁を咬み合わせてのせる構法もあります。地域の森から木を与えられ、木の性質を生かしながら架構し、住むひともまた融通無碍に対応しながら、それを美しい空間造形にまで高め、地域とその家族固有の文化を育んできたのです。

 造り手はまた、地域の森を生かし、生きものである木を家に再生することで、住むひとの身体に馴染み、風土に違和感にない造形物としての空間を、環境資産として建て続けてきました。

 風土を凝視し、気候を検証し、住み手と造り手とが顔を合わせ、敷地に立って初めて求められる「家」とはなにかを考える。これこそが自由設計であり、注文住宅であり、家づくりの第一歩であると、私たちは考えます。

 丸順工務店は、遠野に根ざした小さな工務店です。しかし、岩手の一地方から見える家の本質もあります。伝統や文化。ひとの暮らしの営み。森や木。四季の移ろいの機徴。あたりまえの手法。それらを大切に育みながら、一棟一棟の家を心を込めて創り続けていきたいと願っています。